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窓を持つツボ気穴

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“窓を持つツボ気穴”

宮川浩也先生(みやかわ温灸院院長/日本内経医学会会長)は、

「ツボには(365穴のうち)、【気穴(※腎経の气穴ではない)という特別なツボがあり、蔵兪(陰経五兪穴の計25穴)と、府輸(陽経五兪穴+原穴の計36穴)と、熱兪(頭部の熱をもらすツボ+胸中の熱をもらすツボ+胃中の熱をもらすツボ+四肢の熱をもらすツボ+五臓の熱をもらす背兪穴の計59穴)がある。

この気穴は、窓(気の出入口)を持ったツボである。
窓を持っているので皮膚に存在する。
皮膚に存在するのだから、鍼は浅く刺さねばならない。
窓があるのだから、鍼を刺したあとの開け閉めは適切に行われなければならない。
この開け閉めこそが【開闔の補瀉】である。
補法とは、窓を閉じて気の漏出を防ぐことである。
瀉法とは、窓を開いて気の有余をもらすことである。」

と、


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誌上で、気穴の所在と、気穴に対する浅刺や開闔(窓の開け閉め)等の刺鍼の要諦が、〈素問・気穴論篇〉に由来することを詳解されています。

これを根拠に、やはり蔵府治療、すなわち経絡の補瀉調整を行うのは四肢の要穴がその主役であり、浅く刺して鍼口を閉じたり開いたりしなければ、本来の効果を最大限に引き出すことはできないと言えます。
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また、背部兪穴は二通りの使い方ができます。
熱兪として使う場合は、四肢同様、浅く刺して窓を開いて排熱するべきです。
例えば、アトピー性皮膚炎を治療する場合は邪熱の排熱が基本となりますが、多くは気分の熱を清熱解毒します。

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気分は肌肉に相当します。
肌肉は脾の司りです。
〈素問・刺熱論篇〉に五臓の熱は三椎下~七椎下に反応が現れるとあります。
すなわち診断点であり治療点となります。
脾の熱は六椎下の霊台に出てくるので、霊台を瀉せば脾臓=肌肉=気分の熱を冷ますことができますが、瀉法を行う場合は窓を開ける刺鍼手技を加える必要があるということです。
それで熱兪として作用させることができます。

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〈素問・刺熱論篇〉「・・・熱病氣穴、三椎下間主胸中熱,四椎下間主鬲中熱,五椎下間主肝熱,六椎下間主脾熱,七椎下間主腎熱,・・・。」

もうひとつの使い方として、腰背部の筋疲労をとるのを目的とするならば、虚実寒熱を見極めて開闔の補瀉をする必要はなく、コリ所見(硬結や筋張り)を目当てに置鍼したり、必要に応じて深く刺しても構いません。

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頑固な硬結には、お灸がよく効きます。
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器質的な変性疾患には、刺絡をする場合もあります。
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この論は、初学者だけでなく、中堅~ベテランの先生方にも有意義なものになるのではないでしょうか。

少なくとも、我々経絡治療家にとっては、普段の臨床で何気に行っている本治法で、なぜ四肢の要穴を使うのか、なぜ補法の場合は去ること弦絶の如く抜鍼と同時に鍼口を閉じ、瀉法においては下圧をかけて抜鍼し、鍼口は閉じないのかが、とってもクリアになりました。
また、東洋はり医学会が開発した補瀉の技術は、この気穴に対して最高のアプローチをしているということを、より一層認識することができました。

「補法のテクニック(tonification technique)」

「瀉法のテクニック(draining technique)」


お陰様で、本治法で四肢の要穴に補瀉をする理論的拠り所が、さらに磐石のものとなりました。

宮川先生には、心より感謝申し上げます。
(より深く学ばれたい方は、〈素問・気穴論篇〉を熟読してください。)

宮川先生には、日本伝統鍼灸学会で何度かお目にかかりましたが、それ以外にも様々な媒体で、宮川先生の教えの一端に触れさせていただいております。
いつも思うのですが、本当に分かりやすくスッと入ってきます。
そんな先生の書籍を1冊ご紹介させていただきます。


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温灸の専門書ですが、冒頭で経脈にも触れておられ、初学者でも経絡や気血が理解しやすい内容になっていてお得です。
特に鍼灸学生のみなさんに読んでもらいたいなぁ\(^^)/
もちろん臨床家にもお勧めです。
是非ご購入されるとよいかと思います。



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by dentouijutu | 2017-09-07 11:19 | 鍼灸師・鍼灸学生のためのお部屋

むくみの治療

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【患者】母親。
【現病歴】昨夜から足がむくんで動作の度に痛みを伴う。
【腹診】脾心虚、肝腎実、肺平。
【脉状診】浮・数・平。
【比較脉診】脾心虚、肝腎実、肺平。
【証決定】脾虚証。
【適応側】病症に偏りなく、女性なので右。
【本治法】右水泉を補い→右陰陵泉を補い→右曲沢を補い→左水泉を補う。
【補助療法】宮脇奇経治療、左照海ー右列缺と右申脈ー左後谿に金銀粒を貼付してその上から知熱灸で主穴3壮従穴2壮。
【標治法】腎兪と膀胱兪に知熱灸3壮ずつ。
最後に両水泉に銀粒貼付。
【経過】腫れがひいて痛みがマシになる。

浮腫みは、浮腫と水腫に大別できます。
浮腫は圧痕が残り、脾や腎の変動です。
水腫は圧痕が余り残らず、肝の変動です。
また、脾と腎の弁別は心臓から来るものは脾が主体になり、腎臓から来るものは腎が主体になります。
脾の浮腫みは、四肢を司ることから手足が浮腫みます。
腎の浮腫みは、全身性に浮腫みます。
蛋白がおりていれば先ず腎で間違いないでしょう。

基礎知識は、聖典〈霊枢・五癃津液別論篇〉を参照してください。

「黄帝問于岐伯曰、水穀入于口、輸于腸胃、其液別為五。天寒衣薄、則為溺与気。天熱衣厚、則為汗。悲哀気并、則為泣。中熱胃緩、則為唾。邪気内逆、則気為之閉塞而不行、不行則為水脹。余知其然也、不知其何由生、願聞其道。
岐伯曰、水穀皆入于口、其味有五、各注其海、津液各走其道。故三焦出気、以温肌肉、充皮膚、為其津。其流而不行者、為液。天暑衣厚則腠理開、故汗出、寒留于分肉之間、聚沫則為痛。天寒則腠理閉、気湿不行、水下留于膀胱、則為溺与気。五蔵六府、心為之主、耳為之聴、目為之候、肺為之相、肝為之将、脾為之衛、腎為之主外。故五蔵六府之津液、尽上滲于目、心悲気并則心系急、心系急則肺挙、肺挙則液上溢。夫心系与肺不能常挙、乍上乍下、故欬而泣出矣、中熱則胃中消穀、消穀則虫上下作。腸胃充郭、故胃緩。胃緩則気逆、故唾出。五穀之津液和合而為膏者、内滲入于骨空、補益脳髄而下流于陰股。陰陽不和、則使液溢而下流于陰、髄液皆減而下。下過度則虚、虚故腰背痛而脛痠。陰陽気道不通、四海閉塞、三焦不写、津液不化、水穀并于腸胃之中、別于廻腸、留于下焦、不得滲膀胱、則下焦脹、水溢則為水脹。此津液五別之逆順也。」〈霊枢・五癃津液別論篇〉

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by dentouijutu | 2017-08-26 19:59 | 鍼灸師・鍼灸学生のためのお部屋

下痢の鍼灸治療

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痢疾

【基礎篇】

痢疾(下痢)は、痢病(大腸※カタル・渋り腹・腎虚)と泄瀉(胃カタル・筒下し・脾虚)に大別されます。

※カタルとは、感染症の結果生じる粘膜腫脹と、粘液と白血球からなる濃い滲出液を伴う病態のこと。カタルは通常、風邪、胸部疾患による咳に関連して認められるが、アデノイド、中耳、副鼻腔、扁桃、気管支、胃、大腸に出現することもある。カタル性滲出液は排出されることもあるが、狭窄とともに管腔を閉塞させたり、慢性化したりすることもある。(〈wikipedia〉より抜粋)

現代医学的には、
食中毒など感染を起こしたとき(分泌性下痢)、腸の水分吸収が不十分なとき(浸透圧性下痢)、暴飲暴食やストレスなどで腸が動き過ぎるとき(運動亢進性下痢)に起こります。(〈くすりと健康の情報局〉より抜粋。)

古くは、難経と霊枢にさらに細かく五泄に分類されています。

「五十七難曰.泄凡有幾.皆有名不.然.泄凡有五.其名不同.有胃泄.有脾泄.有大腸泄.有小腸泄.有大瘕泄.名曰後重.胃泄者.飮食不化.色黄.脾泄者.腹脹滿.泄注.食即嘔吐逆.大腸泄者.食已窘迫.大便色白.腸鳴切痛.小腸泄者.溲而便膿血.少腹痛.大瘕泄者.裏急後重.數至圊而不能便.莖中痛.此五泄之法也.」〈難経・五十七難〉

五十七難に曰く.
泄は凡て(すべて)幾ばく有るや? 皆な名有るや不きや(なきや)?
然り.
泄は凡て五つ有り、其の名は同じからず.
胃泄あり、脾泄あり、大腸泄あり、小腸泄あり、大瘕泄あり、名づけて後重と曰うなり.
胃泄は、飲食が化せず、色は黄なり.
脾泄は、腹が脹満し、泄注し、食べれば即ち嘔吐し逆す.
大腸泄は、食すれば已て(やがて)窘迫し、大便の色は白く、腸は鳴りて切痛す.
小腸泄は、溲して膿血を便し、小腹が痛む.
大瘕泄は、裏急、後重し、数々(しばしば)圊(セイ かわや)に至るも便すること能わず、茎中が痛む.
此れが五泄の法なり.

【臨床篇】

胃泄・脾泄は脾虚、大腸泄は肺虚・脾虚・腎虚、小腸泄は肺虚・腎虚・(一部肝虚もあるかな)、大瘕泄は腎虚になることが多いと感じています。
いずれの証であれ、合水穴を補います。
腸の病ですが胃経に邪が浮くことがしばしばあります。
胃経には胃府(足三里)・大腸府(上巨虚)・小腸府(下巨虚)の下合穴が揃っているのも深い意味があります。
急性の場合は実邪が、慢性の場合は虚性の邪になるかと思いますが、そうでない場合もあります。
実邪か虚性の邪かを脉状で弁別して、瀉法または補中の瀉法を施します。

奇経は、照海ー列缺・陥谷ー合谷・公孫ー内関を使うことが多いです。

標治法は、慢性・急性かかわらず左の曲池に知熱灸7~8壮。
食中りには裏内庭に知熱灸10壮あるいは透熱灸で熱さが来るまで多壮。
大腸がん・クローン病・潰瘍性大腸炎などで下血する場合はカネコ点に知熱灸3~5壮。

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by dentouijutu | 2017-08-24 20:39 | 鍼灸師・鍼灸学生のためのお部屋

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「修学旅行や家族旅行中の月経を避けて来るようにすることはできないでしょうか?」

というご依頼をいただくことがしばしばあります。
鍼灸治療で、日程をずらしたり、もうすでに始まっていたらその期間だけ止めたり、または月経量を少なくすることができます。

①左右を比べて圧痛の強い側の蠡溝(骨の上で凹んでいるところですが標準位置より上下することがしばしばあります)
②両方の三陰交
③左の築賓
に皮内鍼を貼付します。
④右太衝ー右通里(腱の尺側に取る)・右照海ー左列缺に金銀粒またはPM粒を貼付します。
①~④を出発の前日か当日に行い、旅行中はずっとつけておきます。

このような治療で安心して温泉やプールを楽しんでいただくことができます。
旅行だけでなく、スポーツの試合や大会の日に、思いきりプレーできるように、止めてほしい、少なくしてほしいというケースもあります。

※皮内鍼は経絡に直角に止めます。
向きは脉状がよくなる方向に。例えば三陰交なら、腎経に向けて止めた方と肝経に向けて止めた方とでどちらがいいかを脉状で判断して、よくなる方向に向けて止めます。
よくなれば脉の輪郭が鮮明になり、輪郭が不鮮明だと間違いです。
深さは皮膚を引っ張って放すとそれで鍼が引っ掛かるのでもうそれで固定します。刺すと効きません。
きちんと枕と敷布団と掛布団をします。

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by dentouijutu | 2017-08-24 20:34 | 鍼灸師・鍼灸学生のためのお部屋

補法のテクニック(tonification technique)
補法は虚(deficient)、即ち生気の不足を補うのが目的。

①毫鍼篇
「補に曰く、之に随ふ。之に随ふの意は、妄りに行くが如し、行くが若く按ずるが若く、蚊虻の止まるが如く、留るが若く還るが若く、去ること弦絶の如し。左をして右に属せしむ。其の気、故に止まる。外門巳に閉じて、中気乃ち実す。」〈霊枢・九鍼十二原篇〉
②鍉鍼篇
「鍼、長さ三寸半、てい鍼は鋒黍粟しょぞくの鋭なるが如し、脉を按ずることを主つかさどる。陷すること勿なかれ、以って其の気を致いたすなり。」〈霊枢・九鍼十二原篇〉



瀉法のテクニック(draining technique)
瀉法は実(excess)、即ち邪気を取り除くのが目的。
「瀉に曰く、必ず持ちて之を内れ、放ちて之を出す。陽を排して鍼は得れば邪気泄るることを得る。」〈霊枢・九鍼十二原篇〉
①実邪に対する瀉法
a.浮実(気の変化)
b.弦実(血の変化)
②虚性の邪に対する補中の瀉法(draining within tonification technique)
a.塵(気の変化)
b.枯(気の変化)
c.堅(血の変化)
③陰実和法(yin exces Waho)
和法(Waho)は虚でもなく実でもなく、即ち気血の滞りを流し中和させるのが目的。

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※刺鍼する際に痛みを与えないための条件
【刺し手】(Sashide)
①鍼柄はなるべく柔らかく持つ。
②指頭で持たずに指腹で持つようにする。
③鍼体がたわまないよう、力がまっすぐ鍼尖に届くようにする。
④鍼は無理に刺入しない。自然に刺入できるまで待つ。
⑤鍼先の感覚を捉えるように心がける。
【押し手】(Oshide)
①左右圧は鍼が動くのを妨げない。
②穴所に密着させる。
③周囲の皮膚面に平らであり、押し手を置いた穴所だけが凹まない。
④鍼尖の方向を安定させる。
⑤刺鍼中は微動だにもさせない。
『講習部用実技指導要領・東洋はり医学会基礎教育研究委員会編』より抜粋


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by dentouijutu | 2017-08-13 10:35 | 鍼灸師・鍼灸学生のためのお部屋

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1)〈霊枢・本神篇〉の解説

「天が人に与えたものが徳。地が人に与えたものが気。徳と気が交流するものが。生を発現させるものが精。二つの精が結合したものが。神に従って往来するものを魂。精と並んで出入するものを。物を取り扱う所以となるものを心。心にあるおもいを意。意を保持するものを志。志にもとづいて保持したり変化させたりするものを思。思にもとづいて遠くを追求するものを慮。慮にもとづいて物を処理するのを智。」

(1)天が人に与えたものが徳。地が人に与えたものが気。
水と火(天一水を生ず、地二火えを生ず)。本性と生命力。天候と大地が耕かされて産生される天地の恵みが人を育む。
(2)徳と気が交流するものが
正に生命。
(3)生を発現させるものが精。
父母から受け継ぐ先天の精と飲食物から取り入れる後天の精が生命力・生命現象を発現させる。
(4)二つの精が結合したものが
男女両精、父母の精が結合して生まれる新しい命。その過程、命の誕生は正に神秘の極み。地球上のあらゆる生命体の中で人だけが精神活動を行えるので、これを生命の神秘「神」とした。
※ここまでは生命の起源・誕生・成長発育生殖について述べられている。

(5)神に従って往来するものを魂。
心神は太陽、肝魂は影。自意識に対して反応する機能的無意識。
(6)精と並んで出入するものを
五官(視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚)や本能を主る肉体的無意識。
※人だけが有する機能の説明。

(7)物を取り扱う所以となるものを心。
精神活動の中枢は心臓。
(8)心にあるおもいを意。意を保持するものを志。志にもとづいて保持したり変化させたりするものを思。思にもとづいて遠くを追求するものを慮。慮にもとづいて物を処理するのを智。
内外の刺激を感受→思考回路・処理→認識→自我までのメカニズム。
※心神(自我・自意識)に至るまでのこころと頭の動きと変化の解説。

2)精神活動のメカニズム
(1)肺魄
物を取り扱う所以となるものは心であるとして、精神活動は心臓で行われているんだと解説されています。
その前文で、神に従って往来するものを魂。精と並んで出入するものを。とありますが、後半部分の精と魄に焦点を当てて下さい。
精とは、原気です。原気とは生命力の源であり、生命現象を発現させる根源的物質です。
先天の原気と後天の原気があります。
父母から受け継ぎ元々具わっている命の源である先天の原気が尽きたときが人の生命現象の終わりを迎えるときです。寿命です。
母親のお腹にいるときは、胎盤を通じて原気は補充されていますが、誕生してからは自分の力で補充しなければなりません。
天空の気と飲食物が合わさった栄養分を後天の原気として取り入れ、先天の原気を継ぎ足していきます。
これが精です。
その精と同じように、特に後天の原気である飲食物や酸素のように、人体に出たり入ったりするものを魄といっています。

これは何でしょう?

飲食物や呼吸以外で人体に出たり入ったりするものとは?
答えは五官です。

五官とは視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚の感覚のことです。
外からの情報は五官から入ってきます。
目から色が、耳から音が、鼻は臭いをかぎ分け、舌は味を噛み分け、皮膚が温度や痛みを感じます。
このように、五官という機能によって外からのあるいは内外からの情報が出たり入ったりします。
このような肉体的無意識の働きを魄とします。
また、魄は五臓の肺に宿る神気ですから、これを合わせて肺魄とします。

(2)精神活動のメカニズム
本神篇ではこれを受けて続きます。
「物を取り扱う所以となるものを心」とあるように、肺魄で取り入れられた外界からの情報は即座に心臓に送られます。
次の図を見て下さい。

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心臓の臓腑図ですが、肝腎脾は心臓の下に糸のようなもので吊りさがっていますが、肺だけは心臓よりも上に配置されています。
肺魄からの情報が直ちに心臓にいくという機能を図で現しているようにも思えます。
心臓に入ってから、思惟活動しなわち思考回路が展開されていきます。
「心にあるおもいを意。意を保持するものを志。志にもとづいて保持したり変化させたりするものを思。思にもとづいて遠くを追求するものを慮。慮にもとづいて物を処理するのを智。」
この意~智までの霊妙な変化・処理によって、最終的にその情報を認識します。
「それは青色だ」「それは甘くて美味しい」「熱っ!」
ですから、心臓は精神活動の中枢といえます。まさに心は君主の官、神明出ずです。
この働きを神様の神と書いて神とします。
神は心臓に宿る神気ですから、合わせて心神とします。
肺魄の働きを肉体的無意識とするなら、心神は自意識とします。自我の芽生えです。

3)こころの病に至るプロセスとメカニズム
1)肝魂
次に、精神活動が乱れて心の病を発病するまでを解き明かしていきましょう。
外界の情報・刺激を肺魄が感受→心臓に輸送→意~智で処理される→そして認識する→自我が芽生える。
心神で認識した対象に対して感情を抱きます。

好きか嫌いか。

好きであれば、良好な感情ですからストレスはかかりません。
嫌いであれば、負の感情ですからストレスがかかります。
このストレスが積み重なると精神活動に支障をきたし、いよいよ発病するのですが、そうならないようにストレスを食べてくれる機能が私たちには具わっています。
このハタラキを肝臓とします。

肝臓は五行では木に属します。木のような働きがあるということです。木々は地中に根を広げ、地上に枝を伸ばし、葉を生い茂らせます。このような働きが肝臓にもあります。
上に横に下にあちこちにのびのびと気を巡らせています。
この働きによってストレスが降りかかっても気が滞ることなく、発散できるようになっています。
嫌なことがあっても知らず知らずのうちに忘れることができるのはこの肝臓というハタラキのお陰なのです。
ここで再度本神篇の登場です。
「神に従って往来するものを魂。」とあったのを思い出して下さい。
神、つまり自意識に従って活動するのが魂ということになります。
魂とは肝臓に宿る神気です。
合わせて肝魂とします。
心神に従って、肝魂が発動します。
心神で芽生えた自我、好きか嫌いか。
どちらの感情であっても肝魂は発動します。
好きであれば、体に良好な影響を与えてくれます。
嫌いであれば、心を曇らせ、長引くと疲弊します。
このときに肝魂が発動して、木という性質を使って、気の停滞をのびのびとさせ、鬱憤を発散させます。
結果、ストレスは受けたものの溜まることはありません。
この肝魂というハタラキは無意識に行われています。
無意識にストレスという外敵と戦ってくれているわけです。
機能的無意識。
これは今の医学に当てはめて言うならば、正に免疫です。
正しくは免疫を包括したもっと幅広いスゲーやつということになります。
だから、笑うと免疫があがるというのは、その通りなのです。
笑うとか、楽しいとかは、好きでないと芽生えない感情です。
心神が良好な感情を抱くことで、肝魂がガン細胞を包囲できるくらい免疫がUPするのです。
古代の中国人は、そんなことまで分かっていたのです。
東洋医学ヤバイです。

良質な感情は免疫を高め、負の感情は免疫を下げます。

これだけでも覚えて帰って下さい。

(2)発病のプロセスとメカニズム
まとめます。
精神活動を経て自我が芽生えます。好きか嫌いか。
嫌いという自我が芽生えると→ストレスが発生します→無意識に肝魂が発動してストレスを食べてくれます→これを何度も何度も繰り返すうちに、あるいはとっても大きな一撃を食らうと→肝魂という防衛システムが機能不全に陥ります→発散できいないストレスがどんどん溜まっていきます→精神活動が乱れます→疲弊した結果発病します→躁うつ病・パニック障害・心臓神経症やその他様々なこころの病。

(3)病因
〔1〕外因・・・私たちは社会生活を営んでいます。家庭・ご近所・地域・会社・仕事場・学校・サークル・クラブ活動・習い事等々に所属している方が大半です。
常に対人関係が発生します。
つまりストレスにさらされています。
外から受けると考えれば、ストレスは外因、外邪といえます。現代人が最も感受する外邪です。
〔2〕内因・・・嫌いといっても実際には様々な感情に分かれます。これを七情とします。
怒・喜・思・憂・悲・恐・驚の感情を内因とします。

この感情にさらされ、七情が乱れたときにストレスを抱えることになります。
ストレスを受けて心神に芽生えた感情が
a.過度な怒りであれば肝に影響し気が上がります(トサカに上る)。
b.過度な喜びであれば心に影響し気が緩みます(だから事故をする)。
c.過度な思いであれば脾に影響し気が結ぼれます。
d.過度な憂い悲しみであれば肺に影響し気が消えます。
e.過度な恐れ驚きであれば腎に影響し気が下がります(腰が抜ける・失禁)。
これが、こころの病を発病するプロセスです。

4)こころの病を癒し和らげ治し防ぐために
(1)診察診断
心神に芽生えた過度な感情はいなかる七情の乱れであるか、どの臓腑に影響しているかを四診を合参して診察診断し、虚実を弁えてはりきゅうで補瀉調整するのが治療の眼目です。

東洋はり医学会創立50周年記念講演で、元会長柳下登志夫先生が、七情が五臓に影響した場合の状態を臨床例を挙げておっしゃっておられましたので紹介します。

〔1〕肝・・・実の時は怒り、虚の時は取り越し苦労となる。
〔2〕心・・・実は喜びを、よくもないこともい非常に喜んだり笑う、しかし虚したばあいには無感動、何にも感動しない状態になる。
〔3〕脾・・・実は思いを過ごす、虚は思いが起こらない。
〔4〕肺・・・実の時は悲しみ、憂い、わけもなく泣けて涙が止まらない。虚になるとじっと動かず悲嘆に暮れる。
〔5〕腎・・・実の時は何者とも知れない者に捕らえられそうになって、じっとしていられないで逃げる、恐れる、恐れが止まらない。虚は足腰が立たない、動けない、わずかの光、小さな音に恐れおののく。


このようにこころの動きが体の状態となってなって現れますので、是非参考にして下さい。

(2)治療
さあラストスパートです。
古代の中国人は治療法まで編み出しています。

〔1〕喜びは憂いに勝つ。
〔2〕悲しみは怒りに勝つ。
〔3〕怒りは思いに勝つ。
〔4〕思いは恐れに勝つ。
〔5〕恐れは喜びに勝つ。


という五行理論を応用しての治療法を授けてくれています。
例えば、憂い大過で気が消えている患者さんに対しては、肺金の実と捉えて、喜びを与えよに則って、心火を補って肺金の実を剋すように治療します。
その他もこれと同様に考えて実践して下さい。
ですから、俗に言う「心に虚なし腎に実なし」ではないということが言えます。
実際にうつ病の患者さんに対して、心虚で左の大陵を補うと良くなる方がたくさんいらっしゃいます。
正しくは「五臓全てに虚実あり」です。

ただし、これだけでは治療は完全とは言えません。
一定期間治療しても良くなってもまた悪くなる患者さんがいます。
治療して体がよくなっても、環境が変わらなければストレスにさらされ、発病のプロセスを繰り返すからです。

では、どうすればよいか?

ここでもう一度思い出して下さい。
嫌い→七情の乱れ→を受けストレスと感じるのは心神の自意識です、己の自我です。
こことどう向き合うかなんです。

夢分流という江戸時代の鍼灸の流派では、これを明確に述べています。過剰な欲であったり、怒り、ねたみ、ひがみ、うらみ、つらみは己のこころを汚します。
心神を曇らせるのです。
と、夢分翁は三つの清ましにおいてこれを戒めています。
かの名医、岡本一抱も五臓だけ治療してもダメだと、心神に本をおきなさいと説いています。

鍼灸で体の不調を整えると同時に、心神にアプロ―チしなければなりません。
残念ながら自意識や自我には鍼やお灸は届きません。こころの毒を洗い流すことができるのは自分自身です。
自分を救えるのは自分だけなんです。
私たち鍼灸師はそのお手伝いをすることができる尊い職業なのです。
簡単にはいかないですが、手軽に始められることがあります。
それは何よりも先ずは、治療家自身が自分の心神を輝かせることです。
患者さんの立場に立って見ると、病気の状態というのは暗いトンネルの中にいるようなものです。
暗いトンネルの中で何を頼りに出口を探しますか?

それは光です。

患者さんにとってみれば、治療家こそが希望の光です。
患者さんにとっての希望の光と成れるように、心神を磨いて下さい。
それには、笑顔と感謝です。
自然と楽しさがにじみ出てくるくらい楽しんでください。
後悔や自信のなさは心神を曇らせます。
誰かを恨むような人生を送っては絶対にダメです。
固執・執着もいりません。
こころから楽しんで感謝して、臨床にあたってください。

東洋医学は、こころと体と魂の医学です。
どうか深く心を尽くして学び実践して下さい。
みなさんの心神が光り輝けることを願っています。

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by dentouijutu | 2017-04-23 16:24 | 鍼灸師・鍼灸学生のためのお部屋

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1)治療家の心構え


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こころの病は、物質(モノ)で推し量ることができない病であり、取り除くことができない。
機能(ハタラキ)の失調が原因だから、機能に原因を求めて診察診断し、治療することができる東洋医学の領域であるということを、鍼灸湯液家は強く自覚し、使命感を持って臨床にあたらなければならない。

2)心の病の病因病理
(1)本・・・心神の曇り。
(2)標・・・五神(魂・神・意智・魄・精志)の変動

3)必須知識
1)〈霊枢・本神篇〉人の精神活動のメカニズムが述べられている。
黄帝は岐白先生に質問して言った。
「およそ鍼術では、先ず神を必ず根本とする。血・脈・営・気・精・神は、五臓が蓄えている物である。もしむやみやたらに情欲のままに生活すれば精は失われ、魂魄は浮つき、意志がぼんやりして、思考力が無くなってしまう。これは天の罰だろうか?人の過ちだろうか?そもそも徳・気・生・精・神・魂・魄・心・意・志・思・智・慮とは何か?そのいわれをお尋ねしたい。」
岐白先生が答えて言う。
「自分における天が
であり、自分における地がであり、徳と気が交流するものがである。生を発現させるものをと言い、二つの精が結合したものをと言い、神に従って往来するものをと言い、精と並んで出入するものをという。物を取り扱う所以となるものをと言い、心にある思いをと言い、意を保持するものをと言い、志にもとづいて保持したり変化させたりするものをと言い、思にもとづいて遠くを追求するものをと言い、慮にもとづいて物を処理するのをと言う。」

意味

解字

本性。生まれつきの人柄。ものに備わった本性。春の徳は木・夏の徳は火・秋の徳は金・冬の徳は水・中央の徳は土。「徳を蔵してやまず」〈素問・四気調大神論〉道徳。本性の良心を磨き上げた優れた人格。恩恵・恩情・愛情。《類》恵。恩恵を与える。恩を感じる。ありがたく思う。恵がこもった。ありがたい。利益。もうけ。

心+直。もと、本性のままの素直な心の意。徳はのち、それに彳印を加えて素直な本性(良心)に基づく行いを示したもの。直(まっすぐ)と同系。

いき。のどから屈折して出てくるいき。《同》气。《類》息。固体ではなくて、ガス状をしたもの。とくに蒸気のことは汽という。「気体」「空気」人間の心身の活力。「気力」「正気」「養気=気を養ふ」「気、壱ならば、則ち志を動かす」〈孟子・公上〉《漢方》人体を守り、生命を保つ力・エネルギー。
「営気(経脈を通って全身に行きわたり、心身を養う気)」
「衛気(人体をとり巻いて守る活力)」
「二八(十六歳)腎気盛んに、天癸(月経)至る、精気溢写(あふれ注ぐ)、陰陽和す」〈素問・上古天真論〉
天候や四時の変化をおこすもとになるもの。また、陰暦、一年を二十四にわけた一期間。二十四気「節気」「気候」「天気」
人間の感情や衝動のもととなる。心の活力。「元気」「気力」「若者の強い気力」
かっとする気持ち。「気死」「動気(かっとする)」
「必ず気をもつて之を凌ぐ」〈史記・酷吏・義縦〉
形はないが、なんとなく感じられる勢いや動き。「気運」
偉人のいる所にたち上るという雲気。「望気術(雲気を遠くから見て、運勢を定める術)」
中国哲学で万物を成り立たせる根源的物質。
「万物は陰を負ひて陽を抱き、沖気(調和した気)もつて和をなす」〈老子・四二〉
宋学で、生きている、存在している現象をいう。
存在するわけを理という。
「理気二元論」

气はいきが屈曲しながら出てくるさま。氣は「米+气」で米をふかすときに出る蒸気のこと。
《単語家族》乞(のどをつまらせていきをはく)・?(のどをつまらせてげっぷを吐き出す)・慨(のどをつまらせてため息をはく)などと同系。

生きる。生かす。《類》活。《対》死。生む。生まれる。子を生む。子が生まれる。物を作り出す。物ができる。《類》産。《対》没。生える。生う。起こる。発生する。植物の芽が生える。なま。いきいきとして新しいさま。煮炊きしてない。また、そのもの。《対》熟。生きていること。生物。生命。人生。生きているもの。また、いのち。学問をしている若い人。自分の事をへりくだって、弟子、また青二才の意を含めていうことば。いきながら。いきたまま。うまれながら。うまれつき。なれていないさま。未熟なさま。ひどく。非常に。き。混じりけのない。純な。うぶ。ういういしい。なる。。

若芽の形+土で、地上に若芽の生えたさまを示す。生き生きとして新しい意を含む。

《単語家族》青(あおあお)・清(すみきった)・牲(いきている牛)・姓(うまれによってつける名)・性(うまれつきのすんだ心)などと同系。

きれいについて白くした米。汚れや混じりけを取り去って残ったエキス。こころ。人間のエキスである心。もののけ。山川にひそむ神。男性のエキスである液。精液。汚れがなく澄みきっている。くわしい。手が行き届いてきれいなさま。また巧で優れているさま。《対》粗・怚・疎・雑・麤。雑念を交えずそれ一筋であるさま。《類》専。きれいさっぱり。すみきった光。五精(五つのすみきった星)。水精(水晶)。澄んだひとみ。目精(ひとみ)。

靑(=青)は「生えたばかりの芽+丼(井戸に溜まった清い水)」で、汚れなく澄んだ色を表す。精は米+靑で、汚れなく精白した米。清(澄みきった)・静(しんと澄みきった)・睛(すんだひとみ)・晴(澄みきった空)などと同系。

かみ。日・月・風・雨・雷など自然界の不思議な力をもつもの。天のかみ。祇(地のかみ)・鬼(人のたましい)に対する言葉。《類》霊。理性では分からぬ不思議な力。ずばぬけて優れたさま。こころ。精神。神をひろくす(心を広くする)。神をもって遇し、目をもつて視ず〈荘子・養生主〉。祖先のかみ。

申はいなずまの伸びる姿を描いた象形文字。神は示(祭壇)+申で、いなずまのように不可知な自然の力のこと。のち不思議な力や目に見えぬ心の働きをもいう。

《単語家族》電(いなずま)と同系。

陽のたましい。人の生命のもとになるもやもやとしていてきまった形のないもの。人が死ぬと肉体から離れて天に昇ると考えられていた。《類》魄・霊。「魂魄」。陽を魂といふ。

人や物の精神。精神活動。「肝は魂を蔵す」〈素問・宣明五気〉。人の心。心持。心境。

鬼+云(雲。もやもや)。もやもやとこもる意を含む。雲と同系の言葉で渾(もやもやとまとまる)と非常に縁が近い。

陰のたましい。肉体を取りまとめてその活力のもとになるもの。魂は陽で、魄は陰。魂は精神の働き、魄は肉体的生命を主る活力。人が死ねば魂は遊離して天上に昇るが、なおしばらく魄は地上に残ると考えられていた。《類》魂。「魂魄」「魄力」「人生まれて始めて化するを魄といふ」肉体の物理的な活力。「肺は魄を蔵す。」〈素問・宣明五気〉人の体の全体のわく。肉体の形。「形魄」月が細いとき鈍く光って見える部分。月がた。《同》覇。「死魄」「生魄」月。また月光。「魄然」とは外形だけあって中がうつろなさま。かす。「粕」。「落魄」とは落ちぶれること。

鬼+白(ほの白い外枠だけあって中身の色がない)。人の体をさらして残った白骨、肉体の枠のことから形骸・形体の意となった。

《単語家族》白・覇(月の外枠)と同系。

五臓の一つ。循環系の中心をなす器官。心臓。「心房」「心は君主の官(器官なり)、神明これより出づ」〈素問・霊蘭〉こころ。精神。心臓で精神作用が営まれると考えたところから。《類》形。むね。《類》胸。物事の中心。真ん中。真ん中にあるもの。二十八宿の一つ。基準星は、今のさそり座に含まれる。なかご。

心臓を描いたもの。それをシンと言うのは、沁(しみわたる)・滲(しみわたる)・浸(しみわたる)などと同系で、血液を細い血管のすみずみまでしみわたらせる心臓の働きに着目したもの。

《参考》「腎」の代用字としても使う。「肝心」。

こころ。おもい。心中でおもいめぐらした考え。心中のおもい。おもわく。気持ち。わけ。意味。おもう。心の中でおもいめぐらす。勝手な憶測をする。《類》憶。

音とは、口の中に物を含むさま。意は音+心で、心中に考えめぐらし、おもいを胸中に含んで外に出さないことを示す。

《単語家族》憶(おもいを心中に含んで胸がつまる。)・抑(中に抑え含む)と同系。

こころざす。ある目標を目指して心を向ける。心+さすに由来する訓。こころざし。ある目標を目指した望み。またあることを意図した気持ち。しるす。書き留める。メモする。また心にとめる。《同》誌。書き留めた記録。

この土印は、進み行く足の形が変形したもので、之(いく)と同じ。士女の士(おとこ)ではない。志は心+之で心が目標を目指して進み行くこと。また止まるに当て、書き留める意にも用いる。詩(何かを志向する気持ちを表した韻文)と同系。

おもう。こまごまと考える。またなつかしんでおもう。細かく心をくだく。《類》慮。「思慮」物思いに沈んでいるさま。憂いを帯びているさま。おもい。心で色々思い巡らすこと。あごひげのたれたさま。

囟は幼児の頭に泉門(囟門)のある姿。俗に言うおどりのこと。思は囟(あたま)+心(心臓)で、思うという働きが頭脳と心臓を中心として行われることを示す。小さい隙間を通してひくひくと細かく動く意を含む。

《単語家族》鰓(ひくひくする魚のえら)・崽(小さい)と同系。

《類義》「念」は心中深く思うこと。「想」はある対象に向かって心で思うこと。「憶」は様々におもいをはせること。「懐」は心の中におもいを抱くこと。「慮」は次から次へと心を配ること。「虞(ぐ)」はあらかじめ心を配ること。

おもんぱかる。次々と思い巡らす。また関連した事柄を考え合わす。《類》思・虞。「考慮」おもんぱかり。あれこれと考えること。細かいはからい。「遠慮」とは気がねして控えめにすること。

心+盧の略体で、次々と関連したことを連ねて考えること。

《単語家族》旅(並んだ人々)・侶(ずるずると連なる友づれ)・呂(連なるせぼね)と同系。

《類義》「思」

さとい。物事をずばりと会得したり、あてたりできる。知恵や術に優れている。またそのような人。《同》知。《類》賢・聖。《対》愚・闇(あん)。「智者(道理をわきまえた人。)」「愚者(愚か者と賢い者)」「人を知る者は智なり」物事をとらえて理解する働き。知恵。《同》知。賢いと思う。

知とは矢+口で、矢のようにずばりと当てて言うこと。知と同系。ずばりと言い当てて、さといこと。息がつかえて出るさま。適(まっすぐ)は入声(つまり音)のことばであり、聖(ずばりと見通す)はその語尾が鼻音となった言葉。


知者の養生とは、四季に順応し、寒暑の変化に適応し、喜怒をなごませて日常生活を安定させ、陰陽を節制して剛柔を調整する。このようにすれば病邪の侵入する隙間する隙がなく、長生久視する。

だから、恐怖したり思慮すると神を傷つける。神が傷つくと恐怖に惑わされ続ける。悲しみが内臓に影響すると生命が枯れて死んでしまう。喜んだり楽しんだりし過ぎると神が発散して収拾がつかなくなる。憂いていると気が塞がって通らなくなる。非常に怒ると混迷して治まらなくなる。恐れおののくと神が消耗して収まらなくなる。

①・・・恐怖したり思慮すると心の蔵する神を傷つける。神が傷つくと恐怖を自制できなくなり、身体がやせ衰え、皮膚や毛髪が色沢を失い冬に死ぬ。
②・・・
憂愁が続くと脾の蔵する意を傷つける。意が傷つくと煩悶して乱れ、手足が挙がらなくなり、皮膚や毛髪が色沢を失い春に死ぬ。
③・・・
悲しみが内臓に影響すると肝の蔵する魂を傷つける。魂が傷つくと身の程が分からなくなって聡明さがなくなり、言行が異常になり、陰器が収縮して痙攣をおこし、肋骨が動きにくくなり、皮膚や毛髪の色沢がなくなり秋に死ぬ。
④・・・
とめどなく喜楽していると肺の蔵する魄を傷つける。魄が傷つくと気が狂い、傍若無人に振舞うようになり、皮膚がしわがれ、毛髪も色沢を失い夏に死ぬ。
⑤・・・ひどく怒っていつまでも止まないと腎に蔵する志を傷つける。志が傷つくと前に言ったことをよく忘れるようになり、腰が屈曲し難くなって、皮膚や毛髪の色沢を失い夏の土用に死ぬ。
⑥・・・
恐れがいつまでも続くと精を傷つける。精が傷つくと骨が弱々しくなって萎え、手足の先が冷え、遺精することもある。
⑦・・・
だから五臓は蔵精を主管するものであり、傷つけてはいけない。傷つければ精を保持することができずに陰虚の状態になり、陰虚の状態になれば気がなくなり、気がなくなれば死ぬのである。だから鍼を用いるものは、病人の状態を観察して精・神・魂・魄の存亡得失を理解する。五臓が傷つけば鍼で治すことができない。

a・・・肝は血を蔵し、血は魂を宿す。肝気が虚すと恐れやすくなり、実すると怒りやすくなる。
b・・・
脾は営を蔵し、営は意を宿す。脾気が虚すと手足の自由がきかず、五臓が安定しなくなり、実すると腹が張り小便の出が悪くなる。
c・・・
心は脈を蔵し、脈は神を宿す。心気が虚すと悲しみやすく、実すると笑いが止まらなくなる。
d・・・
肺は気を蔵し、気は魄を宿す。肺気が虚すと鼻が塞がって呼吸困難となり、実すると息が荒くなり声がしわがれ胸がつまって顎をだして息をするようになる。
e・・・
腎は精を蔵し、精は志を宿す。腎気が虚すと手足が冷え、実すると腹が張るようになる
f・・・
五臓が安定しなければ、必ず五臓の病状や様子を詳細に調べて、その気の虚実を理解し、慎重に調和してやらなければならない。

(2)〈鍼道秘訣集・三清浄(三つの清まし)〉

本来的自我(心神)を輝きだすためには三つの清浄を行うことを夢分翁は説いている。翁は我々が本来持っている仏性(心神)を曇らせるものを、三つのとらわれの心(三毒心)に分けて説明している。

①『貪欲(むさぼり)』・・・誰でも欲心は持っているが、これが度を過ぎると流される。欲心のために本来的自我が曇らされて、よい治療が出来ない。また患者を貧富によってはもちろん、自分の好みによって選んではいけない。治療家は人間の幅を作らなければならない。幅を作るということは、本来的自我に徹することである。すると自然にどんな人にも応じられるようになる。頬をつねられると痛いと感ずる。それと同じ気持ちを持っている。

②『嗔恚(いかる)』・・・
怒りにとらわれていると、怒りは際限なく怒りを呼び治療に集中できなくなる。怒るのは自分にとらわれるからである。折角一生懸命治療したのに、不平不満だけを口にする患者がいる。そんな患者に会えば腹も立つが腹を立てれば正しい病態把握などできない。だから我々は余程努力して本来的自我を磨き出すようにしなければならない。

『愚痴(おろか)』・・・宇宙を貫く道理に暗いことを愚痴という。人間は自分の限界のある相対的な知恵によって物を判断する。その限界性を知っていれば救いがあるが、これを絶対化すると救いがない。ひがむはゆがむと同じ意味で、素直に物を見れないことである

これらの三毒心を拭ってとらわれのない境地に至ると、はじめて本来的自我が発現し得、直観が冴え素晴らしい治療が出来る。この直観に支えられた治療、生命の本質に由来する治療は、どこまでいっても行詰ることはない。


(3)〈鍼灸真髄〉


①・・・精神と肉体と離して考えることは出来ぬものゆえ、体を治療することが同時に心を治療することにもなるのである
②・・・
神経衰弱というものは自然に放任しておいて治るのを待つべきではなく、治療によって即ち五臓の調節によって治るのである。
③・・・
「漢方で精神というのは心臓と腎臓のことでここが悪ければ物におぢけ易く精神の力が衰えると言うてます。
④・・・
「人間の魂魄というのは肝臓と肺臓の精気です。魂は昼は主る精気、魄は夜を主る精気です。それから精神というのは腎臓と心臓と精気です。そうして魄魂精神を活動させる意と智とを主るのが脾臓の精気です。意と智が働かなければ、いくら精気があっても動かぬから知恵が出ないのです。まあいわば脾臓は知恵袋です。ここが悪くなると物忘れしていけません。」
⑤・・・
心臓と丹田
a・・・
「丹田の調節をしないで、ただ心臓ばかりをなほそうとしても治るものではありません。おさめる処へおさめないで、ただ絶対安静などさせたって治るものではない。絶対安静は、ああしていて心臓の自然に癒えるのを待つのです。
b・・・
漢方では、精神は丹田におさまると云います。そうして精神とは腎臓と心臓とをいうのです。精神を丹田におさめれば心臓病などわけもなく治ります。おさめる処がわかれば楽なものです。精神のおさめ処がわからねば心臓など治るものではないです。」(沢田先生は)斯う言われた。丹田とは生命の田ということである。丹田には二つある。関元が下丹田で、脳が上丹田である
c・・・
病は総て膈より入り~←悸肋部つまりストレス。

中野の見解
丹田・・・←トラウマに関係。
丹田・・・こころ←うつ病に関係
丹田・・・(治める所、そして胆(きも)をすわらせる所)←パニック障害・心臓神経症に関係

4)治療
(1)本・・・心神を鼓舞する。
(2)標・・・五臓を整える。
①喜びは憂いに勝つ。
②悲しみは怒りに勝つ。
③怒りは思いに勝つ。
④思いは恐れに勝つ。
⑤恐れは喜びに勝つ。
(3)養生・・・三毒を清ます。

解説・臨床編に続く・・・。


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by dentouijutu | 2017-04-23 00:53 | 鍼灸師・鍼灸学生のためのお部屋

文字から見る八会穴

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一、腑会(中脘)の
【腑】


はらわた。人体の諸器官で、食物や液体をしまってあるところ。
漢方医学では、胃・胆・三焦・膀胱・大腸・小腸を「六腑」という。
《同》府。
こころ。胸のうち。「肺腑」
《解字》府は、いろいろな物をまとめて置いておく所。付と同系の言葉。腑は「肉+府」で体内にある食物や液体のくら。もとは単に府と書いた。

二、臓会(章門)の
【臓】

はらわた。人体内の諸器官の総称。
《同》蔵。「心臓」「臓腑」
《解字》「肉+藏(しまいこむ)」で、人体内にしまいこまれている諸器官のこと。
《単語家族》藏(=蔵)・倉と同系。

三、筋会(陽陵泉)の
【筋】

すじ。肉の繊維。すじばって、引き締まった筋肉。
《同》觔。
「脈を訣し、筋を結ぶ」〈史記・扁鵲〉
「肝は筋を主る」〈素問・宣明五気〉

ひと続きになった線上のもの。竹の弓芯。
物事の道理。「筋道」小説・演劇・映画などの大体の内容。「筋書」具体的な名前を示せないとき、それを少しぼかしていうことば。方面。「公安筋」
素質。「筋がよい」
鉄道・街道などの沿線。
細長いものを数えるときのことば。
《解字》「竹+肋(すじばったあばら)」
《単語家族》緊(引きしめる)と同系。

四、髄会(懸鐘)の
【髄】

骨の中の柔らかい部分。「骨髄」
「髄は骨の充なり」〈素問・解精微論〉
植物の茎のしんの柔らかい部分。
物事の中心。要点。精華。「神髄」
《解字》ずいは外側の形に柔らかく従うこと。髄「骨+ずい」で、骨の外わくに従う、柔らかいゼラチン状のなかみ。
《古訓》すね・なか

五、血会(膈兪)の
【血】

ち。人や動物かの心臓から出て、全身に栄養分を送り、不要物を排泄器官へと送る液体。血液。
漢方医学では、血を陰性と考えて栄養を含むものとし、気を陽性と考えて活力を与えるものとし、あわせて血気という。
「陰陽は血気の男女なり」〈素問・陰陽応象大論〉
ちぬる。血をぬる。また祭礼に動物のいけにえの血をそなえる。またその祭り。「血祭」
血のつながった間柄。また血のつながった。
《類》肉。「血肉」「血縁」「血族(同族)」
血を流すように激しい。血みどろの。血のにじむ涙やつば。「血涙」「啼血」(血を吐くほどに声を絞ってなく)「血戦」「血本」(血みどろの苦労でためたもとで)「戦士は陵(李陵)の為に血を飲む」〈李陵・答蘇武書〉
《解字》深い皿に、祭礼にささげる血のかたまりを入れたさまを描いたもので、ぬるぬるとして、なめらかの全身を回る皿。
《単語家族》滑(なめらか)と同系。

六、骨会(大杼)の
【骨】

ほね。なめらかに動く。関節のほね。転じて、からだのしんにあるほね。
「腎の合は骨なり」〈素問・五臓生成〉
「戦はんかな、骨は砂礫に暴されん」〈李華・弔古戦場文〉
物事を組み立てるしんになるもの。「骨子」
からだ。またからだつき。「老骨」「骨相」
人柄。品格。「気骨」「硬骨漢」
こつ。死者の、火葬にした骨。「納骨」
物事をうまくやらせるための、やり方のたいせつな点。要領。「骨をのみこむ」
苦労。手数。「骨を惜しむ」
《解字》冎は咼や窩の原字で、上部は、大きく穴があいた、関節の受けるほうの骨。下部は、その穴にはまりこむ、関節の下のほうの骨。骨はこれに肉を加えたもの。
《単語家族》滑(なめらかに動く)・咼(あな)・窩(あな)と同系。

七、脈会(太淵)の
【脈】

みゃく。細く分かれた血管。ちのすじ。「動脈」「静脈」
漢方医学では、気血の通路である経脈と絡脈とを包括した語。また血液が匯聚(めぐり集まる)する血脈のこと。古典では脉の字を使うことが多い。
「それ脈(血のルート)は血の府なり」〈素問・脈要精微論〉
「脈(気のルート)の屈折出入りするところ」〈霊枢・邪客〉

細い血管が波打つこと。
漢方医学では手の寸・関・尺の三か所によって脈をみる。「脈搏」「脈診」
「善く脈をなす者は、謹んで五臓六腑を察す」〈素問・金匱真言論〉
細長くつらなったすじ。「山脈」「水脈」
「脈脈」とは細い線がつながるさま。
細くつながった手づる。物事のかすかな見こみ。「脈がある」
《解字》脈(の月でない右側)は水流の細くわかれて通じるさま。脈は「肉+脈(の月でない右側)」で、細く分かれて通じる血管。永は脈(の月でない右側)の左右反対向きの形で、脉と脈は同じ。
《単語家族》派(細くわかれた流れ)・糸(細いいと。)などと同系。

八、気会(膻中)の
【気】

いき。のどから屈折して出てくるいき

《同》气。
《類》息。
「気をおさへて、息せざる者に似たり」〈論語・郷党〉
固体ではなくて、ガス状をしたもの。とくに蒸気のことは汽という。「気体」「空気」
「天はうららかに、気は清む」「気は蒸す、雲夢沢」〈孟浩然・臨洞庭〉
人間の心身の活力。「気力」「正気」「養気=気を養ふ」
「気、壱ならば、則ち志を動かす」〈孟子・公上〉
《漢方》人体を守り、生命を保つ力・エネルギー。
「営気(経脈を通って全身に行きわたり、心身を養う気)」
「衛気(人体をとり巻いて守る活力)」
「二八(十六歳)腎気盛んに、天癸(月経)至る、精気溢写(あふれ注ぐ)、陰陽和す」〈素問・上古天真論〉
天候や四時の変化をおこすもとになるもの。また、陰暦、一年を二十四にわけた一期間。二十四気「節気」「気候」「天気」
人間の感情や衝動のもととなる。心の活力。「元気」「気力」「若者の強い気力」
かっとする気持ち。「気死」「動気(かっとする)」
「必ず気をもつて之を凌ぐ」〈史記・酷吏・義縦〉
形はないが、なんとなく感じられる勢いや動き。「気運」
偉人のいる所にたち上るという雲気。「望気術(雲気を遠くから見て、運勢を定める術)」
「吾、人をしてその気を望ましむ」〈史記・項羽〉
中国哲学で万物を成り立たせる根源的物質。
「万物は陰を負ひて陽を抱き、沖気(調和した気)もつて和をなす」〈老子・四二〉
宋学で、生きている、存在している現象をいう。
存在するわけを理という。
「理気二元論」
《解字》气はいきが屈曲しながら出てくるさま。氣は「米+气」で米をふかすときに出る蒸気のこと。
《単語家族》乞(のどをつまらせていきをはく)・嘅(のどをつまらせてげっぷを吐き出す)・慨(のどをつまらせてため息をはく)などと同系。

九、八会穴の
【会】

あつまり。出会い。また、春秋時代、諸侯が会合すること。盟約は結ばない。「宴会」
「鴻門之会」「葵丘之会」〈孟子・告下〉
あつまる。あつめる。ひとところにまとまる。また、多くのものを寄せあつめる。
《類》合・集。「会同」「会合」「文をもつて友を会す」〈論語・顔淵〉
あう。あつまって対面する。「会見」「会晤(あって話しあう)」
その物事に出くわす。
《類》遇。「大雨に会う「平林を伐るものに会ふ」〈詩経・大雅・生民〉「その怒りに会ひあへて献せず」〈史記・項羽〉
巡りあわせ。また、物事の要点。「機会」「運会」
たまたま。ちょうどその物事に出くわした意を示す言葉。ちょうど。「燕の太子丹、秦に質たり、亡げて燕に帰る」〈史記・荊軻〉
かならず。うまく巡りあえたらと予期している気持ちを表す言葉。きっと。膾
《類》必。
「天上人間会ずあひ見ん」〈白居易・長恨歌〉
「会須かならずすべからく・・・べし」とは、きっとそうあるべきだという気持ちをあらわす副詞。
「かならずずべからく一飲三百杯なるべし」〈李白・将進酒〉
思い当たる。そうかと悟る。気持ちにかなう。「領会(なるほどとわかる)」「会心(心に会す)」
人々の集まる所。「都会」「省会(中国の省の中心である都市)」
収支の結果をあつめて計算すること。「会計」
「歳終はれば則ちその出入を会す。」〈周礼・天官・職幣〉
冠などの縫い目。
「会弁は星のごとし」〈詩経・衛風・淇奥〉
《解字》「印(あわせる)+增(ふえる)の略体」で、多くの人があつまって話をすること。
《単語家族》繒(=絵。色糸を寄せあわせた模様)・膾(肉を寄せあわせたごちそう)と同系。また、和(寄せあわす)・話(あつまって会話する)・括(寄せまとめる)とも縁が近い。
《類義》「遇」は、二つのものがふと出あうこと。「逢」は、両方から進んで来て一点で出あうこと。「合」は、ぴったりとあわさること。「値」は、まともにそこにあたること。「遭」は、ひょっこり出あうこと。「対」は、双方がちょうど合致するようにむきあう意。「向」は、ある方向に進行すること。「迎」は、来る人を出迎えて双方がかみあう意。


これを端的にまとめると、腑・臓・筋・髄・血・骨・脈・気の八つの気が、それぞれ出あい集まる代表的な経穴が八会穴ということです。
文字からイメージを膨らませて臨床運用してみてください。

例えば、筋会である陽陵泉は急性の筋肉痛に瀉法をすれば即座に痛みが楽になります。
マラソンやその他スポーツイベントにおける鍼灸ボランティアでよく使って喜ばれています。

証決定の際、脉が分かりにくい時に、太淵を補うと脉証がハッキリとします。正に脈会たる所以です。

心臓疾患の際、気つけの鍼として気会である膻中を使うことがあります。

妊婦さんがストレスを受けると、季肋部が張ります。その真裏には膈兪があります。
膈兪がつまると瘀血ができます。
この瘀血は胎盤を通じて胎児に影響します。
これを胎毒とします。
この胎毒が原因で、生後、癲癇やアレルギーなど、それ以外にも様々な病気に罹患することがあります。
膈兪を血会と認めざるをえない理由がここにもあります。

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八会穴。
まだまだ研究の必要な分野です。




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by dentouijutu | 2017-04-20 00:13 | 鍼灸師・鍼灸学生のためのお部屋

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心と心包。
五行属性は『火』
同じ火でも
心は【君火】心包は【相火】
灯す火と点す火。...

ライトとファイヤー。

心は五臓の蛍光灯で明かりを灯します。
心包は五臓のファンヒーターで炎
を点します。

臨床的には、
意識障害などは心経を補瀉する機会が多くなります。
寒熱の異常には心包経を補瀉する機会が多くなります。

よく経絡治療の世界では、「心に虚なし腎に実なし」として心虚証や腎実証で治療することはないとされていますが、臨床的には全然出くわします。
心虚もあるし腎実もあります。
もちろん心実もあってそれを認めれば躊躇せずに瀉しています。
「五臓全てに虚実あり」と考えた方が臨床の幅が広がります。

うつ病などは心虚で治療するとすごく経過がいいです。
聖典『素問』にも喜びは憂いに勝つとして治療を指南してくれています。

あるいは心経は【目系】を流注していますから黄斑変性などの眼科疾患を治療する際に補瀉することがあります。
※目系・・・目と脳を連絡するルート。
※余談ですが肝心腎は目系を流注します。
目の蔵象において、腎は視力、肝は遠近、心は明暗という考え方があります。
『小林三剛先生』は腎は発電所、肝は送電線、心は電灯に例えられています。

ということで、【神志】や【血脈】の異常が疑われる病体には、臓腑弁証は心臓の変動と捉えて、病因病理病症に応じて心経か心包経を選経し、虚実を弁えて補瀉してみてください。


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by dentouijutu | 2017-04-09 19:23 | 鍼灸師・鍼灸学生のためのお部屋

蓄膿症の症例

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【患者】嫁の姉。
【主訴】急性副鼻腔炎による、
鼻づまり。
頭痛(眉稜骨痛)。←これだけで湿痰の存在を疑える重要な病症。
歯痛。...

味と臭いがわからない。
吐き気。
発熱(39度)。
食欲不振。
【現病歴】1週間前にかぜをひき、色んな症状が出てきたので医療機関を受診。レントゲンを撮ると上から下まで膿が溜まって真っ白になっていた。

【望神】目に力がない。
【腹診】心下部が堅い。臍下不仁。
【脉診】浮・数・実。
【証】割愛するが四診合参して腎虚証。
【適応側】右。

【本治法】右太谿と左足三里に補法。
【補助療法】左内関―右公孫と右陥谷―右合谷に金銀粒を貼付してその上から知熱灸で5―3で奇経灸。
【標治法】下風地に瀉法。
【経過】
鼻づまり・頭痛軽減。
歯痛消失。
味と臭いがわかるようになる。
お腹が空いて食べれた。
吐き気消失。
解熱。

翌日も治療。
【導入】左田頭点に神氣精打鍼。
【証】腎虚心実証。
【本治法】右太谿に補法。左の郄門と懸鍾を瀉法。
【補助療法】同じ。
【標治法】左沢田流小腸兪に神氣精打鍼。
【止め鍼】(背部)肺兪→心兪→肝兪→脾兪→腎兪と(腹部)中脘→天枢→関元。
【経過】家事・育児ができるようになる(^^)v

【考察】
①蓄膿は抗生剤が良く効くが、鍼灸と併用した方が経過が楽で治りいい。
②鼻の骨は上は目と下は歯と隣接しているため、膿が溜まる場所によっては目の下や歯が痛くなる。なので虫歯から蓄膿になることもある。
局所解剖については恩師戸村多郎先生の著書やSNSがすごく分かりやすいです。
③伝統医学においては鼻は肺の外候とされているが、実際は手足の陽明経が中を流注する。
胃経・大腸経に虚実の別はあれ熱が波及すると鼻疾患が現れる。
この熱が深く進むと心経の熱に移行する。
心熱になると臭覚に影響します。なぜなら心は五役では臭を主るからです。
また脾熱になると味覚に影響が出ます。同じように脾は五役では味を主るからです。
さらに蓄膿になると鼻汁が濁って粘って色がつきますが、これは肝の変動です。
肝は五役では色を主るからです。
例えば鼻汁が白いとしましょう。
白は肺の色ですから今肝の風邪が肺に入っているということが推察できるわけです。
黄色であれば肝の風邪が脾に入っています。←黄疸などはこれです。
五役大事です。(肝は色・心は臭・脾は味・肺は声・腎は液)
④蓄膿症は一言で言うと風湿病です。

【反省】翌日の治療で心の邪実を認めたので郄門から瀉しましたが、大陵や労宮でもよかったかもしれません。体幹に近いほど下焦(腰下肢)に影響し、末梢に近いほど上焦(頭顔面部)に影響するからです。←上下取穴の理屈ですね。
効果判定は、
①左寸口脉が柔らかくなっていること。
②心窩部の堅さが柔らかくなっていること。
③主訴・愁訴が軽減していること。
また心経と心包経の使い分けですが、これは君火と相火の違いです。
相火は陽気です。熱源です。
君火には温める作用はありません。明かりを灯します。
心は血脈と神志を主りますが、血脈は心拍動ですので相火が関係します。
動悸や心痛や不整脈などは心の陽気の盛衰ですから心包経を補瀉する機会が多くなります。
神志は精神活動ですが、その範疇に意識が含まれます。
私たちの生活で身近に意識に関係するのは睡眠です。
意識が落ちるから眠れます。
なので不眠や立ちくらみや癲癇などの意識障害は、君火が暗いから起こる病症ですからこのような意識障害の時は、心経を補瀉して君火を正常に灯します。
いわば蛍光灯のスイッチです。
通里や霊道に反応がでることが多いです。

【終わりに】
家族や身内や自分の周りの大切な人たちを病苦から救えること。
これが鍼灸師に成って最も良かったなと思える点です。

この喜びを一人でも多くの鍼灸師・鍼灸学生に味わってもらいたくて普及啓発やってます。
僕の指導者としてのモチベーションはこれに尽きます。


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by dentouijutu | 2017-04-09 19:19 | 鍼灸師・鍼灸学生のためのお部屋

生活も心も豊かな鍼灸師を目指して。

by 臨床ファンタジスタ