2018年 06月 12日
東洋医学からみたアトピー性皮膚炎の病因病理と治療法
アトピーの2大症状は真っ赤な皮膚炎とかゆみです。
東洋医学からみると、皮膚炎とかゆみの本体は熱です。
何らかの原因で皮下に熱が停滞すると皮膚が真っ赤に炎症します。
熱は本来体を温める恵みとなるものですが、病的な熱なので、これを邪熱とします。
古代の中国では、人体を蝕み損なうものを全て邪としました。
皮膚炎の正体は邪熱です。
☑火は風を生む
次に山火事をイメージしてください。
燃え盛る炎は次第に上空へと舞い上がります。風を巻き起こします。
自然界の法則では風は火から発生します。
自然界を大宇宙、人体を小宇宙と考えますから、私たちの体でも同じことが起こります。
先ほど申し上げたように、皮下に熱が停滞し、邪熱が発生します。人体で起こった山火事です。
火は風を生むの法則に従い、風が生じます。
☑かゆみと風邪
風は本来人体にとって爽やかな恵みとなるものですが、病的に発生した風なのでこれを風邪とします。
風は揺れ動きます。
皮膚の神経を刺激しかゆみが生じます。
かゆみの原因は風邪です。
風邪には遊走性という特徴があります。
あちらこちらに飛んで行く。
山火事が気流によって山々へ燃え移っていくように、人体でも風邪の遊走性によって全身に皮膚炎とかゆみがひろがっていきます。
☑邪熱の病因病理
ということで、皮膚炎は邪熱によって起こり、その邪熱から派生した風邪によってかゆくなり、風邪の遊走性によって皮膚炎とかゆみが広がるわけですから、邪熱がその元締めになります。
アトピーの治療は邪熱を如何に冷ますかにかかってきます。
では次に、この邪熱はどのようにして発生するのかを解き明かしていきましょう。
結論から言います。邪熱が発生する原因は気血水が滞るからです。
☑気の停滞(気滞と邪熱)
私たちの体には絶えず気が循環しています。それによって生理活動が営まれています。
何らかの原因によって、気が滞ります。
これを気滞とします。
気滞は言い換えれば緊張です。
分かりやすく実演しましょう。
手のひらを出してください。
力いっぱい握ってください。
握り続けてください。
手の中が熱くなります。
緊張状態が続くと内圧が高まって軋轢摩擦が生じます。
そして熱をもちます。
つまり気が滞るとやがて熱が生じ自然発火します。
病的に生じた熱ですのでこれを邪熱とします。
気滞から邪熱を生じます。
この邪熱が皮下に波及すると皮膚炎、火は風を生むの法則に従い風邪でかゆくなり、遊走性によって全身に広がります。
気滞の原因はストレスです。
ストレスは緊張を強めます。気が滞ります。
ストレスこそが最強の外邪です。
☑水の停滞(湿痰と邪熱)
接種した飲食物を胃で消化しますが、体にとって必要なものと要らないものに仕分けます。
必要なものを清とします。
要らないものを濁とします。
濁は当然のごとく大小便となって体外に排泄されます。
清は吸収されて活動エネルギーになります。
清の内訳は栄養分と水分です。
栄養分は気血となり、水分は津液として、私たちの体のあらゆる細胞、組織、器官、臓腑経絡、四肢百骸を養い、潤し活動力を与えてくれます。
この消化吸収排泄から清濁の分別そして気血津液の循環に至るルートをスムーズに行わせる働きを脾臓とします。
脾臓の働きが十全でなくなると、気血津液の循環が滞ります。
スムーズでなくなり、ネバネバやドロドロと淀みます。
水分は流れている間は津液という重要なエネルギーになりますが、淀んで滞ると湿と名前を変えます。
病的に発生した水ですからこれを湿邪とします。
湿邪は煮詰まると痰になるので、併せて湿痰とします。
湿痰という病理産物が生じるとつまり水が停滞すると、気も停滞します。
気滞です。
湿痰は気滞を招きます。
そうして、気滞、邪熱、風邪へと展開していきます。
湿痰の原因は、暴飲病食、運動不足、思慮過度です。
◎岡本一抱の説
石臼の上下の石が脾臓と胃の腑です。
石を動かす取っ手が四肢、手足です。
取っ手をよく動かすと、豆や種を細かく挽けるように、手足をよく動かすと脾胃が動いて消化が良くなります。
なので暴飲暴食や運動不足は清濁の泌別に負担をかけ脾胃を失調させ湿痰を温床します。
思慮過度も善(清)と悪(濁)の泌別に負担をかけます。
☑血の停滞(瘀血と邪熱)
東洋医学の大原則があります。
気が動くと水が動き水が動くと血が動きます。
ですから、気が滞ると水が滞り、水が滞ると血が滞ります。
ですので、気滞や湿痰があると、血が滞ります。
この状態を血瘀とし、そうして瘀血という病理産物が生じます。
気血水の中で血は最も陰性です。
元々消極的であり動きにくい性質を有していますので一度停滞すると中々動きません。
瘀血はさらなる気滞や湿痰を生み出します。
そうして邪熱へと発展していきます。
瘀血の原因は、気滞と湿痰が先ずあります。
他には捻挫打撲転落転倒による外傷も血を停滞させ瘀血を生じます。
そしてもう一つが胎毒です。
☑まとめ
ということで、気血水の停滞である気滞、湿痰、瘀血から緊張軋轢摩擦内圧亢進自然発火によって邪熱が生じます。
邪熱が皮下に停滞すると皮膚炎を発症します。
そして火は風を生むの法則に従い、邪熱は風邪を巻き起こします。
風邪が揺れ動いて皮膚の神経を刺激しかゆみが起こります。
風邪の遊走性によって皮膚炎とかゆみは全身に広がっていきます。
これがアトピー性皮膚炎の全容です。
☑胎毒
先天性のアトピーについて解き明かしていきたいと思います。
素問という大昔に書かれた医学書に、「生まれつきてんかんの持病がある子供が生まれる原因は、母体にいるときに、母親が強いショックやストレスを受けたのが原因です」とあります。
さらに研究を進めた結果、てんかんだけではなくそれ以外の先天性の疾患の原因であることが分かりました。
妊婦がストレスを受けたとします。
先ず季肋部がはります。
イーッと我慢してみてください。
季肋部に力が入るのがよく分かると思います。
人は抑圧されたり我慢するとこうなります。
季肋部の後ろの背中には、膈兪というツボがあります。
膈兪の上には心兪、膈兪の下には肝兪があります。
心兪が所属する心は血脈を主ります。
肝兪が所属する肝は蔵血を主ります。
この血の循環に関与する2臓の兪穴の間に位置する膈兪には一身上の血が集まって来ます。
故に血会です。
八会穴の血会です。
話を戻して季肋部がはると膈兪が詰まります。
膈兪が詰まると血が停滞するので瘀血が生じます。
この瘀血が胎盤を通じて胎児に影響します。
これを胎児があびる毒という意味で胎毒とします。
この胎毒を持って生まれた赤ちゃんはあらゆる先天性の疾患に罹患する確率が非常に高くなります。
産科や助産院でのお産がなかった時代は自宅で産婆さんが取り上げていましたが、初乳前に必ずマクリという漢方薬を口に含ませてこの胎毒を大便にて解毒させていました。
今はこの古き良き習慣は失われてしまいました。
アトピーもこの胎毒によるものです。
生まれたときは何ともなくても、あるいは小さいころに治った場合も、入学、受験、就職などの人生のターニングポイントでストレスを受けるとアトピーを発症したり、再発することになります。
なので、妊婦さんをとっても大事にしてあげてほしいんです。
ストレスなく10月10日を過ごさせてあげてほしいんです。
これはご家族や周りの人たちの協力が不可欠です。
是非それぞれの現場でそれぞれの立場で普及啓発してください。
それとだからこそ必要なのが安産灸です。
安産灸は単に産前産後のマイナートラブルを防ぐだけに非ず、胎毒をきれいにすることができる素晴らしい方法なのです。
鍼は気を動かしますが、お灸は血を動かします。
瘀血を動かしてくれるんです。
それとこれも重要なんですが、鍼灸師が鍼灸治療を施す際には問診しかり必ずコミュニケーションを取らなければなりません。
これがとっても大事なんです。
このやり取りの中にはたわいもない会話も当然含まれますが、これが妊婦さんの心をほぐしてくれます。
すごく大事なことです。
妊娠中ずうっとの鍼灸治療を続けた結果、うちの治療室ではみなさんの赤ちゃんがめちゃくちゃ肌がきれいなんです。肌のきれいなお子さんが生まれるということでとっても喜んでいただいています。
是非、妊婦さんには定期的に治療を受けにきてもらってください。
安産灸の伝統を絶やしてはいけない大きな理由です。
☑治療法
アトピーを根治させるためには、邪熱を鎮火しなければなりません。
その基本的考え方は「水は火に勝つ」です。
邪熱というのは陽気が亢進してヒートアップした状態です。
これを打ち消すためにはクールダウンさせなければなりません。
この働きを陰気とします。
陰には冷やす、潤す、引き締めるという性質があります。
陰気を補って邪熱を冷やし、潤し、引き締めるのです。
これを自前のステロイドとします。
元々副腎に備わっています。
自前のステロイドである陰気は五臓にあります。
五臓の陰気を補って邪熱をクールダウンさせるのが根本治療、本質治療です。
これを経絡治療では本治法とします。
中医学では弁証論治、沢田流では大極療法ということになります。
もちろん、激しいかゆみなどに対する対症療法も重要です。
かゆくて眠れないのはよくないです。
なぜなら陰気というのは睡眠によって補充されるからです。
眠れないと陰気が不足して自前のステロイドが作れません、邪熱の勢いを止めることができません。
なのでかゆみを止める和らげる対症療法はとても大事です。
何といっても肩髃と蠡溝です。
養生も大事です。
気滞の原因はストレスです。
ストレスを貯めないことが気滞の予防法です。
湿痰の原因は暴飲暴食、運動不足、思慮過度です。
食べ過ぎない。
適度な運動を心がける。
あれこれと迷わないこと。
ことが湿痰の予防法です。
瘀血の原因は気滞と湿痰です。気滞と湿痰をこしらえないように心掛けてください。
そして怪我をしないように余裕をもって行動してください。
そして妊婦さんを大事にしてあげてください。
子はかすがいと言われますが、妻は家宝です。
妊娠中は定期的に鍼灸治療を受けてもらってください。
何よりも安産灸です。自宅でもセルフケアしてもらってください。
☑最後に
これがアトピー性皮膚炎の東洋医学です。
正しい証で病因病理を解決し、対症療法いわゆる標治法で症状を和らげ、養生を指導し、ご縁のある患者さんを救えるようにみんなで一緒に切磋琢磨していきましょう!