こころの病を癒し和らげ治し防ぐために~基礎編

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1)治療家の心構え


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こころの病は、物質(モノ)で推し量ることができない病であり、取り除くことができない。
機能(ハタラキ)の失調が原因だから、機能に原因を求めて診察診断し、治療することができる東洋医学の領域であるということを、鍼灸湯液家は強く自覚し、使命感を持って臨床にあたらなければならない。

2)心の病の病因病理
(1)本・・・心神の曇り。
(2)標・・・五神(魂・神・意智・魄・精志)の変動

3)必須知識
1)〈霊枢・本神篇〉人の精神活動のメカニズムが述べられている。
黄帝は岐白先生に質問して言った。
「およそ鍼術では、先ず神を必ず根本とする。血・脈・営・気・精・神は、五臓が蓄えている物である。もしむやみやたらに情欲のままに生活すれば精は失われ、魂魄は浮つき、意志がぼんやりして、思考力が無くなってしまう。これは天の罰だろうか?人の過ちだろうか?そもそも徳・気・生・精・神・魂・魄・心・意・志・思・智・慮とは何か?そのいわれをお尋ねしたい。」
岐白先生が答えて言う。
「自分における天が
であり、自分における地がであり、徳と気が交流するものがである。生を発現させるものをと言い、二つの精が結合したものをと言い、神に従って往来するものをと言い、精と並んで出入するものをという。物を取り扱う所以となるものをと言い、心にある思いをと言い、意を保持するものをと言い、志にもとづいて保持したり変化させたりするものをと言い、思にもとづいて遠くを追求するものをと言い、慮にもとづいて物を処理するのをと言う。」

意味

解字

本性。生まれつきの人柄。ものに備わった本性。春の徳は木・夏の徳は火・秋の徳は金・冬の徳は水・中央の徳は土。「徳を蔵してやまず」〈素問・四気調大神論〉道徳。本性の良心を磨き上げた優れた人格。恩恵・恩情・愛情。《類》恵。恩恵を与える。恩を感じる。ありがたく思う。恵がこもった。ありがたい。利益。もうけ。

心+直。もと、本性のままの素直な心の意。徳はのち、それに彳印を加えて素直な本性(良心)に基づく行いを示したもの。直(まっすぐ)と同系。

いき。のどから屈折して出てくるいき。《同》气。《類》息。固体ではなくて、ガス状をしたもの。とくに蒸気のことは汽という。「気体」「空気」人間の心身の活力。「気力」「正気」「養気=気を養ふ」「気、壱ならば、則ち志を動かす」〈孟子・公上〉《漢方》人体を守り、生命を保つ力・エネルギー。
「営気(経脈を通って全身に行きわたり、心身を養う気)」
「衛気(人体をとり巻いて守る活力)」
「二八(十六歳)腎気盛んに、天癸(月経)至る、精気溢写(あふれ注ぐ)、陰陽和す」〈素問・上古天真論〉
天候や四時の変化をおこすもとになるもの。また、陰暦、一年を二十四にわけた一期間。二十四気「節気」「気候」「天気」
人間の感情や衝動のもととなる。心の活力。「元気」「気力」「若者の強い気力」
かっとする気持ち。「気死」「動気(かっとする)」
「必ず気をもつて之を凌ぐ」〈史記・酷吏・義縦〉
形はないが、なんとなく感じられる勢いや動き。「気運」
偉人のいる所にたち上るという雲気。「望気術(雲気を遠くから見て、運勢を定める術)」
中国哲学で万物を成り立たせる根源的物質。
「万物は陰を負ひて陽を抱き、沖気(調和した気)もつて和をなす」〈老子・四二〉
宋学で、生きている、存在している現象をいう。
存在するわけを理という。
「理気二元論」

气はいきが屈曲しながら出てくるさま。氣は「米+气」で米をふかすときに出る蒸気のこと。
《単語家族》乞(のどをつまらせていきをはく)・?(のどをつまらせてげっぷを吐き出す)・慨(のどをつまらせてため息をはく)などと同系。

生きる。生かす。《類》活。《対》死。生む。生まれる。子を生む。子が生まれる。物を作り出す。物ができる。《類》産。《対》没。生える。生う。起こる。発生する。植物の芽が生える。なま。いきいきとして新しいさま。煮炊きしてない。また、そのもの。《対》熟。生きていること。生物。生命。人生。生きているもの。また、いのち。学問をしている若い人。自分の事をへりくだって、弟子、また青二才の意を含めていうことば。いきながら。いきたまま。うまれながら。うまれつき。なれていないさま。未熟なさま。ひどく。非常に。き。混じりけのない。純な。うぶ。ういういしい。なる。。

若芽の形+土で、地上に若芽の生えたさまを示す。生き生きとして新しい意を含む。

《単語家族》青(あおあお)・清(すみきった)・牲(いきている牛)・姓(うまれによってつける名)・性(うまれつきのすんだ心)などと同系。

きれいについて白くした米。汚れや混じりけを取り去って残ったエキス。こころ。人間のエキスである心。もののけ。山川にひそむ神。男性のエキスである液。精液。汚れがなく澄みきっている。くわしい。手が行き届いてきれいなさま。また巧で優れているさま。《対》粗・怚・疎・雑・麤。雑念を交えずそれ一筋であるさま。《類》専。きれいさっぱり。すみきった光。五精(五つのすみきった星)。水精(水晶)。澄んだひとみ。目精(ひとみ)。

靑(=青)は「生えたばかりの芽+丼(井戸に溜まった清い水)」で、汚れなく澄んだ色を表す。精は米+靑で、汚れなく精白した米。清(澄みきった)・静(しんと澄みきった)・睛(すんだひとみ)・晴(澄みきった空)などと同系。

かみ。日・月・風・雨・雷など自然界の不思議な力をもつもの。天のかみ。祇(地のかみ)・鬼(人のたましい)に対する言葉。《類》霊。理性では分からぬ不思議な力。ずばぬけて優れたさま。こころ。精神。神をひろくす(心を広くする)。神をもって遇し、目をもつて視ず〈荘子・養生主〉。祖先のかみ。

申はいなずまの伸びる姿を描いた象形文字。神は示(祭壇)+申で、いなずまのように不可知な自然の力のこと。のち不思議な力や目に見えぬ心の働きをもいう。

《単語家族》電(いなずま)と同系。

陽のたましい。人の生命のもとになるもやもやとしていてきまった形のないもの。人が死ぬと肉体から離れて天に昇ると考えられていた。《類》魄・霊。「魂魄」。陽を魂といふ。

人や物の精神。精神活動。「肝は魂を蔵す」〈素問・宣明五気〉。人の心。心持。心境。

鬼+云(雲。もやもや)。もやもやとこもる意を含む。雲と同系の言葉で渾(もやもやとまとまる)と非常に縁が近い。

陰のたましい。肉体を取りまとめてその活力のもとになるもの。魂は陽で、魄は陰。魂は精神の働き、魄は肉体的生命を主る活力。人が死ねば魂は遊離して天上に昇るが、なおしばらく魄は地上に残ると考えられていた。《類》魂。「魂魄」「魄力」「人生まれて始めて化するを魄といふ」肉体の物理的な活力。「肺は魄を蔵す。」〈素問・宣明五気〉人の体の全体のわく。肉体の形。「形魄」月が細いとき鈍く光って見える部分。月がた。《同》覇。「死魄」「生魄」月。また月光。「魄然」とは外形だけあって中がうつろなさま。かす。「粕」。「落魄」とは落ちぶれること。

鬼+白(ほの白い外枠だけあって中身の色がない)。人の体をさらして残った白骨、肉体の枠のことから形骸・形体の意となった。

《単語家族》白・覇(月の外枠)と同系。

五臓の一つ。循環系の中心をなす器官。心臓。「心房」「心は君主の官(器官なり)、神明これより出づ」〈素問・霊蘭〉こころ。精神。心臓で精神作用が営まれると考えたところから。《類》形。むね。《類》胸。物事の中心。真ん中。真ん中にあるもの。二十八宿の一つ。基準星は、今のさそり座に含まれる。なかご。

心臓を描いたもの。それをシンと言うのは、沁(しみわたる)・滲(しみわたる)・浸(しみわたる)などと同系で、血液を細い血管のすみずみまでしみわたらせる心臓の働きに着目したもの。

《参考》「腎」の代用字としても使う。「肝心」。

こころ。おもい。心中でおもいめぐらした考え。心中のおもい。おもわく。気持ち。わけ。意味。おもう。心の中でおもいめぐらす。勝手な憶測をする。《類》憶。

音とは、口の中に物を含むさま。意は音+心で、心中に考えめぐらし、おもいを胸中に含んで外に出さないことを示す。

《単語家族》憶(おもいを心中に含んで胸がつまる。)・抑(中に抑え含む)と同系。

こころざす。ある目標を目指して心を向ける。心+さすに由来する訓。こころざし。ある目標を目指した望み。またあることを意図した気持ち。しるす。書き留める。メモする。また心にとめる。《同》誌。書き留めた記録。

この土印は、進み行く足の形が変形したもので、之(いく)と同じ。士女の士(おとこ)ではない。志は心+之で心が目標を目指して進み行くこと。また止まるに当て、書き留める意にも用いる。詩(何かを志向する気持ちを表した韻文)と同系。

おもう。こまごまと考える。またなつかしんでおもう。細かく心をくだく。《類》慮。「思慮」物思いに沈んでいるさま。憂いを帯びているさま。おもい。心で色々思い巡らすこと。あごひげのたれたさま。

囟は幼児の頭に泉門(囟門)のある姿。俗に言うおどりのこと。思は囟(あたま)+心(心臓)で、思うという働きが頭脳と心臓を中心として行われることを示す。小さい隙間を通してひくひくと細かく動く意を含む。

《単語家族》鰓(ひくひくする魚のえら)・崽(小さい)と同系。

《類義》「念」は心中深く思うこと。「想」はある対象に向かって心で思うこと。「憶」は様々におもいをはせること。「懐」は心の中におもいを抱くこと。「慮」は次から次へと心を配ること。「虞(ぐ)」はあらかじめ心を配ること。

おもんぱかる。次々と思い巡らす。また関連した事柄を考え合わす。《類》思・虞。「考慮」おもんぱかり。あれこれと考えること。細かいはからい。「遠慮」とは気がねして控えめにすること。

心+盧の略体で、次々と関連したことを連ねて考えること。

《単語家族》旅(並んだ人々)・侶(ずるずると連なる友づれ)・呂(連なるせぼね)と同系。

《類義》「思」

さとい。物事をずばりと会得したり、あてたりできる。知恵や術に優れている。またそのような人。《同》知。《類》賢・聖。《対》愚・闇(あん)。「智者(道理をわきまえた人。)」「愚者(愚か者と賢い者)」「人を知る者は智なり」物事をとらえて理解する働き。知恵。《同》知。賢いと思う。

知とは矢+口で、矢のようにずばりと当てて言うこと。知と同系。ずばりと言い当てて、さといこと。息がつかえて出るさま。適(まっすぐ)は入声(つまり音)のことばであり、聖(ずばりと見通す)はその語尾が鼻音となった言葉。


知者の養生とは、四季に順応し、寒暑の変化に適応し、喜怒をなごませて日常生活を安定させ、陰陽を節制して剛柔を調整する。このようにすれば病邪の侵入する隙間する隙がなく、長生久視する。

だから、恐怖したり思慮すると神を傷つける。神が傷つくと恐怖に惑わされ続ける。悲しみが内臓に影響すると生命が枯れて死んでしまう。喜んだり楽しんだりし過ぎると神が発散して収拾がつかなくなる。憂いていると気が塞がって通らなくなる。非常に怒ると混迷して治まらなくなる。恐れおののくと神が消耗して収まらなくなる。

①・・・恐怖したり思慮すると心の蔵する神を傷つける。神が傷つくと恐怖を自制できなくなり、身体がやせ衰え、皮膚や毛髪が色沢を失い冬に死ぬ。
②・・・
憂愁が続くと脾の蔵する意を傷つける。意が傷つくと煩悶して乱れ、手足が挙がらなくなり、皮膚や毛髪が色沢を失い春に死ぬ。
③・・・
悲しみが内臓に影響すると肝の蔵する魂を傷つける。魂が傷つくと身の程が分からなくなって聡明さがなくなり、言行が異常になり、陰器が収縮して痙攣をおこし、肋骨が動きにくくなり、皮膚や毛髪の色沢がなくなり秋に死ぬ。
④・・・
とめどなく喜楽していると肺の蔵する魄を傷つける。魄が傷つくと気が狂い、傍若無人に振舞うようになり、皮膚がしわがれ、毛髪も色沢を失い夏に死ぬ。
⑤・・・ひどく怒っていつまでも止まないと腎に蔵する志を傷つける。志が傷つくと前に言ったことをよく忘れるようになり、腰が屈曲し難くなって、皮膚や毛髪の色沢を失い夏の土用に死ぬ。
⑥・・・
恐れがいつまでも続くと精を傷つける。精が傷つくと骨が弱々しくなって萎え、手足の先が冷え、遺精することもある。
⑦・・・
だから五臓は蔵精を主管するものであり、傷つけてはいけない。傷つければ精を保持することができずに陰虚の状態になり、陰虚の状態になれば気がなくなり、気がなくなれば死ぬのである。だから鍼を用いるものは、病人の状態を観察して精・神・魂・魄の存亡得失を理解する。五臓が傷つけば鍼で治すことができない。

a・・・肝は血を蔵し、血は魂を宿す。肝気が虚すと恐れやすくなり、実すると怒りやすくなる。
b・・・
脾は営を蔵し、営は意を宿す。脾気が虚すと手足の自由がきかず、五臓が安定しなくなり、実すると腹が張り小便の出が悪くなる。
c・・・
心は脈を蔵し、脈は神を宿す。心気が虚すと悲しみやすく、実すると笑いが止まらなくなる。
d・・・
肺は気を蔵し、気は魄を宿す。肺気が虚すと鼻が塞がって呼吸困難となり、実すると息が荒くなり声がしわがれ胸がつまって顎をだして息をするようになる。
e・・・
腎は精を蔵し、精は志を宿す。腎気が虚すと手足が冷え、実すると腹が張るようになる
f・・・
五臓が安定しなければ、必ず五臓の病状や様子を詳細に調べて、その気の虚実を理解し、慎重に調和してやらなければならない。

(2)〈鍼道秘訣集・三清浄(三つの清まし)〉

本来的自我(心神)を輝きだすためには三つの清浄を行うことを夢分翁は説いている。翁は我々が本来持っている仏性(心神)を曇らせるものを、三つのとらわれの心(三毒心)に分けて説明している。

①『貪欲(むさぼり)』・・・誰でも欲心は持っているが、これが度を過ぎると流される。欲心のために本来的自我が曇らされて、よい治療が出来ない。また患者を貧富によってはもちろん、自分の好みによって選んではいけない。治療家は人間の幅を作らなければならない。幅を作るということは、本来的自我に徹することである。すると自然にどんな人にも応じられるようになる。頬をつねられると痛いと感ずる。それと同じ気持ちを持っている。

②『嗔恚(いかる)』・・・
怒りにとらわれていると、怒りは際限なく怒りを呼び治療に集中できなくなる。怒るのは自分にとらわれるからである。折角一生懸命治療したのに、不平不満だけを口にする患者がいる。そんな患者に会えば腹も立つが腹を立てれば正しい病態把握などできない。だから我々は余程努力して本来的自我を磨き出すようにしなければならない。

『愚痴(おろか)』・・・宇宙を貫く道理に暗いことを愚痴という。人間は自分の限界のある相対的な知恵によって物を判断する。その限界性を知っていれば救いがあるが、これを絶対化すると救いがない。ひがむはゆがむと同じ意味で、素直に物を見れないことである

これらの三毒心を拭ってとらわれのない境地に至ると、はじめて本来的自我が発現し得、直観が冴え素晴らしい治療が出来る。この直観に支えられた治療、生命の本質に由来する治療は、どこまでいっても行詰ることはない。


(3)〈鍼灸真髄〉


①・・・精神と肉体と離して考えることは出来ぬものゆえ、体を治療することが同時に心を治療することにもなるのである
②・・・
神経衰弱というものは自然に放任しておいて治るのを待つべきではなく、治療によって即ち五臓の調節によって治るのである。
③・・・
「漢方で精神というのは心臓と腎臓のことでここが悪ければ物におぢけ易く精神の力が衰えると言うてます。
④・・・
「人間の魂魄というのは肝臓と肺臓の精気です。魂は昼は主る精気、魄は夜を主る精気です。それから精神というのは腎臓と心臓と精気です。そうして魄魂精神を活動させる意と智とを主るのが脾臓の精気です。意と智が働かなければ、いくら精気があっても動かぬから知恵が出ないのです。まあいわば脾臓は知恵袋です。ここが悪くなると物忘れしていけません。」
⑤・・・
心臓と丹田
a・・・
「丹田の調節をしないで、ただ心臓ばかりをなほそうとしても治るものではありません。おさめる処へおさめないで、ただ絶対安静などさせたって治るものではない。絶対安静は、ああしていて心臓の自然に癒えるのを待つのです。
b・・・
漢方では、精神は丹田におさまると云います。そうして精神とは腎臓と心臓とをいうのです。精神を丹田におさめれば心臓病などわけもなく治ります。おさめる処がわかれば楽なものです。精神のおさめ処がわからねば心臓など治るものではないです。」(沢田先生は)斯う言われた。丹田とは生命の田ということである。丹田には二つある。関元が下丹田で、脳が上丹田である
c・・・
病は総て膈より入り~←悸肋部つまりストレス。

中野の見解
丹田・・・←トラウマに関係。
丹田・・・こころ←うつ病に関係
丹田・・・(治める所、そして胆(きも)をすわらせる所)←パニック障害・心臓神経症に関係

4)治療
(1)本・・・心神を鼓舞する。
(2)標・・・五臓を整える。
①喜びは憂いに勝つ。
②悲しみは怒りに勝つ。
③怒りは思いに勝つ。
④思いは恐れに勝つ。
⑤恐れは喜びに勝つ。
(3)養生・・・三毒を清ます。

解説・臨床編に続く・・・。


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by dentouijutu | 2017-04-23 00:53 | 鍼灸師・鍼灸学生のためのお部屋

生活も心も豊かな鍼灸師を目指して。

by 臨床ファンタジスタ