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表を以て裏を知る(第26回)~舌診の概説

舌の部分:舌面をいくつかの部分に分けて臓腑をうかがうのである。

分け方は経絡学説と上は上に対応し、下は下に対応するという原則に基づいて定められる。

その分け方には2つあり、1つは胃経による区分、1つは五臓による区分である。

胃経による区分では:舌尖は上月完(胃の内腔を胃月完といい、上口を上月完、中口を中月完、下口を下月完という。経穴名にもそれぞれ同名のものがあり、それぞれに対応するものである。)に属し、舌中は中月完に属し、舌根は下月完に属す。この分け方は胃腸病に適用される。

五臓による分け方は、各家の学説により多少の違いがあるが、その共通点は:舌根は腎に属し、舌中は脾胃に属し、舌尖は心に属すとすることである。

異なるところは肝と肺で、舌尖部は心肺に属し、舌辺は肝胆に属し、中心は胃に属し、四田半(中心の周辺部位)は脾に属すとするものと、舌面の白苔は肺に属し、舌の左辺は肝に属し、右辺は胆に属すとするものとがある。

いずれにせよ、舌の部位により臓腑をうかがう方法は、診断上大いに参考に価するが、機械的に走らず、舌質・舌苔と合わせて考えるべきである。

察舌による診病では、舌質と舌苔の両部分を把握することが重要である。

舌質と舌苔の区別:舌面上に発生した一層の苔状のものを舌苔と称し、全舌の肌肉脈絡組織を総合して舌質と呼ぶ。

臨床上で舌質と舌苔を観察するときの基準は、一般的にいうと、内臓の虚実を察するには舌質に重点を置き、病邪の深浅と胃気の存亡を察するには舌苔に重点を置く。

大抵は気病は苔で察し血病は質で診る。即ち気病で血に病のない者は苔に異常があるが、質に変化がなく、血病で気を病んでいない者は、質に異常があるが苔には変化がない。

この他『形色外診簡摩』によれば:「舌質常の如きは、舌苔悪しといえども、胃気の濁穢(だくえ)のみ。舌質既に変ずれば、即ちまさにその色死活を察すべし。活者の底裏を細察すれば、隠々としてなお紅活を見る。これ気血の有滞に過ぎず、臓気敗壊にあらざるなり、死者の底裏は全て乾晦枯痿に変じ、豪も生気なし。これ臓気至らざるなり。いわゆる真臓の色(五臓の精気が敗れてつき、その真気が外に現れ出た色のことで、内臓の重篤な疾患の際に見られる。例えば肝硬変、肝癌などに見られる黄色は脾の真臓の色とされる。)なり。」

これは経験から舌苔・舌質両者の関係を弁別したものである。舌苔の変化から舌質の変化へと進展することは、疾病が重篤な方向へ進展した徴であり、舌質に生気がなくなれば死徴である。
by dentouijutu | 2014-11-05 08:15 | 表を以て裏を知る

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by 臨床ファンタジスタ