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選穴の大事。

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何千年も前に書かれた『難経』という古い医学書があります。
全八十一篇で構成されていますが、69番目の項目に鍼灸の治療法則がまとめられています。

「虚すればその母を補え」

とありますが、この法則をもとに先輩方が永い年月を掛けて臨床で確認した結果、治療におけるツボの基本的な選び方が導き出されました。
①肝虚証は曲泉と陰谷を補います。
②心虚証は大陵と太衝を補います。
③脾虚証は太白と大陵を補います。
④肺虚証は太淵と太白を補います。
⑤腎虚証は復溜と経渠を補います。
これを難経六十九難の治療法とします。
これだけで患者さんの7割を治療することができます。
使わない日がないくらい頻度の高いツボです。
ただし、中にはこのツボではどうしてもうまくいかない患者さんがいます。
それが残りの3割です。
これを補ってくれるのが、難経六十八難の治療法です。
例えば、肝虚証の患者さんに対して基本的なツボである曲泉と陰谷を補います。
通常はこれで良くなるはずなのですが、中々良くならないとします。
肝虚証であっているにもかかわらず。
そういう場合は肝経の他のツボを使います。
選び方の判断材料は病症を参考にします。

①井穴は心下満を主治します。
②滎穴は身熱を主治します。
③兪穴は体重節痛を主治します。
④経穴は喘咳寒熱を主治します。
⑤合穴は逆気して泄するを主治します。

この治療法は難経の68番目に書かれていますが、患者さんの訴える症状に対して要穴が持つ主治症を使って治療するので、別名病症選穴とします。

【症例】
過労と暴飲暴食で下痢を発症した患者さん。
下痢がおさまったら吐き気と胃のムカつきが始まった。
これらは脾の変動である。
脾虚か脾実。
脉証腹証により、脾実であることがわかった。
同時に腎虚もある。
証は腎虚脾実証。
適応側は男ではあるが右側とした。
本来腎虚証であれば復溜と経渠を補うが、みぞおちあたりが気持ち悪いと訴えることから、【心下満】を主治する井木穴を選穴し右の湧泉と少商を補った。
胃に邪が浮いてきたので、左の豊隆に瀉法。
治療後、胸がスッキリしてよくなった。

このように難経六十九難の治療法を基本として、その足らずを六十八難の治療法、別名病症選穴で補完します。
症例にあるように、
①みぞおちがつかえたり気分がすぐれない時は井穴を使います。
②体が熱くてたまらなかったり炎症している時は滎穴を使います。
③体がだる重くて関節が痛む時は兪穴を使います。
④咳や呼吸困難や悪寒発熱する時は経穴を使います。
⑤のぼせたりお腹がくだる時は合穴を使います。

六十九難の治療法でうまくいかない場合は、六十八難病症選穴を試してみてください。

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by dentouijutu | 2016-12-10 13:40 | 鍼灸師・鍼灸学生の部屋

生活も心も豊かな鍼灸師を目指して。

by 臨床ファンタジスタ